- 山田 典生
【部下の話を聴く】
「店長、実は話しがあるのですが」
「ん?どうした」
「すいません、俺店やめようと思って」
「どうした?何かあったか?」
「特に理由がないというか、自分の
可能性を考えて・・・」
「お前、それみんな考えることだよ。
うん、その気持ちよくわかる。
俺にもそういう時があってな・・・」
この後店長の話は延々と40分ほど続く。最後に分かったか?あまり考えすぎるな。
などとほとんど説得力のない言葉で締めくくる。その間相談に来た社員はただ聞くだけ。
恐らく相談者の100倍は店長が喋っただろう。
これでは社員は速攻で辞めて行く。なぜそんなことがわかるのか?
この店長は過去の私だからです。
聞くと聴く。同じ発音だがその意味の深さは違う。聴くという行動は相手の感情に寄り添い、心の声を聴くという意味だ。
相談に来たという行動。ここに注目すれば、大変なことだとわかるはず。社員の人生が
かかっている話だ。会社を辞めるということは大変なことだ。それを自分の自慢話しや格好のいい言葉を使いなんとか納得させようとする。これは自己顕示以外の何ものでもない。
要するに私は彼の話を聴いていなかった。
俺は相談に乗ってもらおうと思ってここに来たのに、お前の良い話や自慢話を聞きに来た
わけじゃない。恐らく彼はそう思っただろう。
若い頃私はそんなこととはつゆ知らず同じ過ちを何度も繰り返した。
皆さんのところに誰か相談者がきたらその内容よりなぜ来たのだろうか?という点に着目したら良いと思う。そしてじっと耳を傾け、黙って親身になって聴いてあげるといい。相談事の大半はその解決策の伝授より話を聴いて欲しいという願望が多く含まれている場合が多い。
そもそも問題のほとんどは自分で解決しているのだから、下手なアドバイスを偉そうに、
しかも上から目線で言わない方が良い。